とにかく考えた、事・方法論を書くことにした。

最近は雑記ばかり。サーフィンと読んだ本に関して考えた事などを書いていきます。

密室の神話 ネタバレ感想と制作視点でも少し

amazonのミステリ関係のレビューでは散々の低評価(参考にならなかった)をもらってばかりだったので、ブログで感想をとりとめなく書くことにします。何重もの密室トリックを考えてみようと思い立った矢先に見つけた、4重密室の作品。読んでみました。この方の作品を読むのはちなみに初めてです。

密室の神話

密室の神話








以下 ネタバレ注意


◆”小説”部分がつまらない。

推理小説の小説部分、動機を示唆する下りやストーリー的な部分ですが、これが全く面白くなかったというのが最初に言いたい感想。最後に明かされる密室構築の動機や、4重密室を構築するのに必要だったために、群像小説のように様々な人物が登場し、各人物の背景をさらりとなぞる必要があったのだろうが、誰に集中して読めばいいのか、何処をおえばいいのかしっくりこない。さらには、謎解きに全然関係しない展開がだらだら続き、謎への熱が煮え切らない。なので没頭して読みふけるというよりは、ちょこちょこ気が向いたら読み進めて1週間かかったという・・・。




◆謎の展開・見せ方も違和感アリ

群像小説風で探偵役がいないことや、リアリティや動機の示す下地のための演出で、ネット2ch風の書き込みを再現して、推理合戦や密室に関する情報提供が時折行われる。これはおっ!と驚いたものの、こじつけだけで犯人に全く近づかないと思える推理合戦が延々と続き、どうしてそんな見当違いの事で論戦しているんだろうと思ってしまった。これは登場人物たちの推理にもいえることだが、オカルトというか・・・、もっと目の前にある密室を何故解こうとしないんだろうか。しっくりこなかった。




◆肝心の謎ながら、伏線を隠しすぎじゃない?

紹介にウソ偽りない堅牢な4重密室の魅力的な謎。それを象徴するかのように1p目から密室の見取り図がででーーんと鎮座している。が、しかし、川との距離とか、謎の足跡の位置や木の位置関係や周りの道路とか、書かれていないし。室内にしても、トリックに関わる痕跡を簡略化することで誤魔化している。あえて隠す意図満々に思える。むむむ。また、描写においても施錠されていた扉以外の部分(トリックに重要だった教務室や窓の鍵や、そのたもろもろ)はあざといぐらいにさらっとしか書かれていない。
極めつけは、密室を解くことが犯人解決につながらないというつくり。これだけ壮大にページさいといて別に無視してもいいのよ〜ってそりゃないわ。




◆もっとこういうのが・・・。

好みの問題が大いに関わってくると思うので、読み飛ばしてもらって結構ですが、個人的には歌野さんの密室殺人ゲーム風のような、トリック一本勝負で読みたかったというのに一票。4重の密室という謎だけで十分魅力的で人を引きつける力があるのだから、それを真っ向から放り投げてくれるだけでよかったし、犯人はわかっていて、トリックについてあれこれ考える展開が良かった。



あるいは、名探偵を登場させ謎の調査や話運びに締まりをだしつつ、連続殺人ものにして、4重密室の事件では犯人はわからないけど、密室トリックを破るべく挑戦しつつ、次の事件や他の事件で犯人のボロがでるみたいなのでも面白かったと思う。あくまで勝手な空想ですが。