ブルーフレンドを読んで。百合漫画家なるものは、まだいないのだろうか
表紙のデザインがきれいだったこととこの百合漫画がすごい!という帯の文句に誘われて、ブルーフレンドを購入した。以下に感想を書く。
- 作者: えばんふみ
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2010/09/15
- メディア: コミック
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■第一印象=少女漫画だな。。。
百合ジャンル専門の漫画家がいないことを残念に思う。百合ジャンル自体の歴史が浅いことや、そもそも1ジャンル(特に市場規模の小さい百合ジャンル)だけ書き続けて生計を立てられるほど漫画の世界も甘くはないという理由で、専門家は生まれにくいのだろう。ブルーフレンドに関しても、絵柄やコマ割から少女漫画風の第一印象をうけた。とはいえ、では百合漫画的な絵柄とは何か? 百合漫画におけるコマ割とは何か?と問われると明確なものはないが、期待とは違った少女漫画色が強すぎるものをを買って失敗したかな・・・と思って不安になった。
■話の内容=少女漫画的展開??
【悪意によるすれ違い展開】という少女マンガ定番の展開だった。例えば1巻後半。男に告白される主人公 → 女友達がその男に嘘を言って別れさせる → 私(主人公)を独占するためにそこまでやるか? → 主人公が女友達を嫌う などの展開であり、結局は言い寄ってきた男がダメンズだったことをしっていた友達が、別れさせるように仕向けたことを誤解されたのである。
漫画への指摘で何度も言っているが、そんな非合理な行動を人間がとるわけない!と思う。売り言葉に買い言葉で傷つけることもあると思うし、他の男といるところを見て彼氏ができたんだろうかと疑うようなこともあると思う。だから誤解やすれ違いは往々にしてありうる。しかし、悪意があって騙そうとするのはそんな単純なことではない。例えばその言い寄ってきた男は、友達の方に好かれたいという悪意があって主人公を騙そうとしてきたのだが、普通に考えて騙した男と付き合うわけないだろう。保健室の先生も同様だ。確かに過去に全てを失ったとしても今は職についてるのだから、あんな自爆みたいな手を使うわけないだろう。自分の目的が達成できる見込みが少ないと明らかにわかる方法をとるやつなんて普通いない。もし合理的に行動するなら、男は主人公に女友達との仲を取り持ってもらうようにお願いするだろうし、保健室の先生は、過去の噂におひれをつけてばらまくとかぐらいが妥当だろう。
というわけで、なんだか話の展開にしっくりこなかった。世界観とか雰囲気はすごくいいんだけどなぁ。キャラ立ちもわりとしっかりしてたし。
■百合漫画における哲学とは
話を盛り上げたり驚きを入れるためには、悪意によるすれ違い展開はすごく使い勝手がいいのだと思うけど、もっと哲学(テーマ)をこめた話を作って欲しいな。ここでいう哲学とは、作者が作品にこめた読者へのメッセージのこと。
自分が思うに、百合漫画における哲学(メインテーマ・見せ場)とはまず大きく次の前提で分かれ、それぞれのメッセージへ細分化できる。
1、女性同士の恋愛について違和感をないものとする舞台設定
こういう設定だと、”女の子同士が”という意味がなくなるため、どういう出会いでどんな風にひかれあって、どんな困難をのりこえて・・・結ばれるというような通常のラブストーリーと見せ場は同様になる。
そのため、突き詰めるならばその人の恋愛観が鍵になる。地味な出会いで終始地味だったけど、その素朴さでハートフルな恋愛を書くとか。お互いが恋愛の駆け引きに明け暮れるような殺伐とした恋愛を書いてもいいしね。
2、女性同士の恋愛について違和感をあるものとする舞台設定
○動機(なんで女の子を好きになったのか)
○関係(だれとだれが。どういう関係の女の子同士が)
○方法(どんな風に結ばれていくのか。わかれてしまうのか)
という点があげられ、特に動機を突き詰める必要がある。しかし、百合とかいうレベルではなく突き詰めすぎるとガチな話になりすぎるので読者に受け入れられるのか疑問。