火星のタイムスリップを読んで
昔のSFは現象ではなく、未来社会を描く場合が多いのか??
- 作者: フィリップ K.ディック,小尾芙佐
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1980/06/01
- メディア: 文庫
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■分類と本作のあらすじについて
今まで読んだ時間モノSFは大きく現象について描かれているか、社会について描かれえているかに分けることができる。例えば『時間泥棒』の場合は完全に現象を中心に描き、時間が盗まれたという問題の解決に焦点が当てられている。一方で、今回の火星のタイムスリップは、未来に火星に移住した人々の生活および問題に多くのページがあてられており、その生活や社会の中でタイムマシンも登場するという具合である。具体的に言えば、火星に移住するようになる歴史的な経緯。火星や地球の技術的水準および現在との変化。火星の政治経済的状況(地球の植民地?独立?)。其処で暮らす人々の個人的な事情など。かなり後半になってそういう社会でのさまざまな事情より土地売買で儲けたい男が現れて、そいつが過去に戻ろうとして時間移動を行う。
■今回の時間移動のまとめと、特徴
今までは箇条書きにせずに特徴だけ書いていたが今回から以下の項目をまとめるようにする。ただ、ある程度時間モノの書評が増えてきて再度別ページなどで見やすいものを作成する場合は以前のものも同様の項目を設ける。
時間移動まとめ
動機:金儲けのため。高く購入される予定の土地を過去に戻り手に入れようとした。
方法:超能力者任せ。自閉症や精神分裂症などの子供は実は時間的な認識能力が普通の人と違う。彼らはビデオの早回しを見ているみたいなものでわれわれの時間についていけないのだという解釈を根底にし、彼らの持つ時間的な異質性を装置などで促進し未来予知や過去への移動を行う。
結果:未来予知に関しては、好きな時間の未来を知ることができずに失敗。過去への移動に関しては期待通りの時刻に戻れたが、過去への移動の予期せぬ代償として自身も精神分裂などの症状が出て、周りの時間と感覚がずれてしまう。また過去に来たはずが前回とは若干違う道に進み殺されてしまう。
特徴:
漠然とした超能力者の能力を方法にせずに、時間的な異質性をもつ子供という解釈をしたこと。
機械及び超能力者などの存在が移動の鍵の場合には、その理由やメカニズムの説明で特徴が現れる。今回は超能力者移動説の中でも珍しいメカニズムだった、
時間移動による体への悪影響があること。
移動したけど思い通りにはいかなかったということはあるが、移動が体に悪影響を及ぼしそれが話に大きく影響していたのも珍しい