『箱男』 安部公房を読んで
- 作者: 安部公房
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/05
- メディア: 文庫
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■メインテーマは、視点
この小説のキーワードは 【視点】である。
・見ること見られること。
・見られる苦痛からの解放→ただの無責任で無関係な視点に成り下がる。
・この小説を書いているのは誰か、(小説で起きていることを見て記録しているのは誰か)つまり、小説の技巧としての視点問題
三作読んでわかったのは、安部公房は、あるキーワードにいくつもの意味を込めているということだ。本編全体を通すような意味を与える事に加え、登場人物が自由に動き回ってキーワードに関わることで、派生的ないくつかの意味も与えている。
■複雑すぎて、読むのはオススメしない
ややこしいことに、第三の視点問題を取り扱っているために、作中の視点を疑ってかからないといけない。ぼくは今・・・・という1節の後に出てくる次のぼくは、同じ僕ではないからだ。別の人が、ぼくという同じ人称を使って書いている可能性があるのだ。さらには、君が記録しているとあるが、今喋りながら君はソレを書いているのか?この小説を書いているのは本当に君なのか?といった問答まで繰り広げられる。何が真実かわからない。細部まで読み返して分析すれば、本当にあったらしい出来事を把握できるかもしれないが、面倒すぎてやる気にはならない。
■純文学小説の存在価値
やはり、2,3時間かけて一冊読み終わってもテーマへの理解が深まってるようには思えない。学術書っぽいものを読んでたほうがマシだ。すこし、純文学小説は休憩する。