本 『砂の女』を読んで 安部公房
人間はどう生きるべきかという視点でついついどんな本を読みながらも考えてしまう。今回の作品も、そういう視点で見た。
■あらすじ
ある教師の男が趣味の昆虫採集をしに、砂丘へ訪れる。砂丘の奥へ進んでいくと其処には、一軒一軒が砂にぽっかり空いた穴の中にある、部落があった。話の流れで1泊することになったのだが、 その穴から出るハシゴを外から取られてしまい、穴の中の家で、女と二人で暮らすことに・・・
■主人公を世界からしめ出す砂は、何の象徴か
この小説の中で興味を引くのは、砂が何の象徴だろうということである。砂からでて元の生活に戻ろうと努力するのだが、主人公は本音では、元の生活を味気なく魅力のないものと捉えている。彼を捕らえる牢獄としての砂はどういう意味をもつのだろうか。
自分は、
砂の中を、元の世界から切り離された社会主義・管理主義的でただ繰り返す日々という見解。砂の外は、味気ない日常。
■その見解で考えると
1の見解
主人公は、元の世界の辛さから切り離されていき、社会主義的な管理主義的な社会に慣れていく様子を描いている小説と見ることが出来る。安定的で変化のない、そして砂をかくという意味のない行動を繰り返す日々に落ち着いていく人間の様子とみえる。この葛藤の様子が面白い。
1,手段と目的の同一化による、諦め
=なんのためにやっていたのか忘れ、手段wpしつづけることに固執する。
2,罪がなければ逃げない?
著者は、いくつかそれと思わせる描写をしている。
1,砂というものを固定しているように見えるが流動しているのだ。流体力学云々・・と。(変化はないようだが、変化している。管理された日々を嫌うともとれるが、そういう日々を肯定しているようにもみえる)
2、意味のない労働でも、過ぎていく時間を耐えさせる人間のよりどころのようなものがある。
■現代的ではないが、男と女の反応の違い
外の自由を求めようとする男の行動と、砂の中の家を守ろうとする女の行動との意識の違いも現れている。ハシゴがないと、自由に外に出られないじゃないか。ソレを不便に思わないのかという質問(詰問)に対して、なぜ用もないのに外に出る必要があるのです?と女が返す様子など、まさにソレを感じさせた。他にもいくつか本編中にある。
- 作者: 安部公房
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/03
- メディア: 文庫
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