とにかく考えた、事・方法論を書くことにした。

最近は雑記ばかり。サーフィンと読んだ本に関して考えた事などを書いていきます。

シャーロックホームズの思考術を読んで 要約と私的見解

◆はじめに

シャーロックホームズの思考術は、現実世界の物の見方に影響を与え参考になるものである。本著のそんな煽り文句でまんまと購入してしまった。名探偵に憧れる一員として、ずばり現実世界で探偵の真似事、例えば事件でもおきたときに解決や糸口をみつけられるような、そんな秘密の技術でも得られればと思ったのだ。さて、内容の簡単な要約と私的見解を下に記述する。ちなみに、探偵術というより、文字通り”思考術”の本である。







クリティカルシンキング懐疑主義者たれ、脳が楽をしていることを自覚する。

本著の一番言いたいことは、懐疑主義者たれという一言に尽きる。マインドフルネス。マインドフルな状態になれと表現されている。



われわれの脳は、”基本的に””楽をして””無意識の直感的処理”を行う。これは脳に入ってくる情報の取捨選択といった入力面でもそうだし、そういった情報やらから判断し出力する領域でも同様である。基本的にはその直感的自動処理に頼り、ここぞという時だけ立ち止まって熟考する脳の構造は、普通に生きる分には問題ないが、より科学的な思考や判断、決断を下し行動する、そう、ホームズのように常に冴え渡る脳で最良の答えを導こうと働くには、それでは駄目で、自分の脳がどういう処理をしたか常に振り返り、無意識を有意識に変えていく必要がある。それほど、実は脳は騙されやすくいいかげんで、テキトーなのである。



当然疲れるし常に有意識状態にはならないが、意識的な脳の状態や信じていた脳がどういうことで騙されやすいのか知り、なれていくことはできる。本書では様々な心理学的や神経学的アプローチで、バイアスやら脳のいい加減さを指摘しているが、わりと雑然とそれでいて大量に書かれているので、脳の騙されやすさや使い方指南は、具体的な部分まで落とし込みしきれていないようなきもする。ただ一例を上げると、天気でも脳活動の判断は影響を受けるという研究結果もあり、どういう風に、どんな無意識に影響されやすいかの数々の点には驚かされた。



◆(ホームズの)科学的思考を今一度理解する。

科学的思考
・問題設定・・・何を問題と設定するのか。
・観察、収集分析・・・問題に関する情報を集める。
・仮説・・・集めた情報を元に、仮説をたてる
・検証・・・仮説を立証する為に、肯定否定の証拠がないか確認し矛盾がないか確認する。



自分の脳が無意識に楽していることを知る。そして、思考や判断がその無意識に偏向されていないかチェックする視点を持った上で、上記のプロセスを繰り返し、より正しいと思え、明確な根拠があり、検証された答えを導いていくべきである。



問題・観察をするうえで重要な要素
○選択性・・・目的意識を持つ事で、脳の動きや観察が鋭敏に、集中し記憶量や方向付け、みる点も変わってくる。
○客観性・・・より客観的な情報であるかどうか、吟味する。
○包括性・・・5感をフルに使って、情報を集める。
○積極的関与・・・やる気があるかないかで、処理や記憶力、認識様々変わってくる。




仮説・推理をたてる上で重要な要素
○想像力を持つ・・・ここでいう想像力とは、集めた客観的事実というパズルのピースで、どんな絵を描けるのか、試行錯誤すること。組み合わせたり回転させたり。自由に新しい組み合わせを探す事。



しかし、この考えるという事においても、脳は常に楽をしようとする。慣れてきた車の運転について人はもう最初ほど意識しないように、もっとよくとか他に何かないか?等と考えることを辞めてしまう。それは完結・完了した安定的状態を能が望むからであり、また、ある程度習熟・なれてしてしまうと、新しい発見や喜び、獲得が徐々になくなることで、新しい学習がないか探す努力とソレに見合う進歩獲得がつりあわなくなってきて、成し遂げた気になってしまうのである。



集めた情報を並べ替えたり、弄繰り回すのだから、少し距離を置いて遠くから眺めるのが望ましい。空間や時間、事件現場で思考するなど、問題点に集中できる物理的距離をさぐってみたり、あるいは、瞑想、リラックスといった精神的距離をとることで、新しい組み合わせや何かを発見できるかもしれない。失敗することを恐れずに、どんどんいろんな組み合わせを試してみることが大事。後は検証で確かめればいい。




推理でも色々と思考の偏向経口(バイアス)やコツがある。
○1度信じると、後からそれを覆すのは難しい。
○筋を通したがる。ありがちなストーリーに落とし込んで理解しようと見てしまう。
○偶然のことと、重要な事を区別する。客観的事実はなにか踏まえたうえで、内省し調整し編集する。
○ありえないことと不可能な事を区別する。ありえないことでもおきることはある。
○推理や仮説をたてたのなら、肯定否定の面から情報を検討し見落としや矛盾しないか確認する。



◆重複する部分もあるが、振り返りもかねて

○自分の内面をみつめる。
自分が騙されていないか、そして今何をするべきか。どういう問題を設定するのか。やる気はでているのか。自己の状態や認識を調整して、問題に向かうう上で、騙されにくく集中しやすい状態で臨む。



○よく観察する。
一度下した結論や最初の思いつきに左右されやすいわれわれの感情を今一度抑えて、まっさらな気持ちで、目的だけを思い出し、さまざまな角度からそして注意深く客観的に観察する。



○想像する、推理する
観察で集めたピースを組み替えて、全く別の絵(結論)にならないか、あれこれと想像する事。組み合わせを変えてみること。可能性を洗い出す。あえて問題から距離をおくのもコツである。頭の中に浮かぶ様々なストーリーから考えるのではなく、あくまで厳格な目的と、そこで集めた情報だけに注視すること。




◆終わりに、私的見解を交えつつ。

本書では、間違いや失敗を認めて、修正し学んでいく姿勢が一番大事と締めくくられている。当然、そのためには、散々繰り返されてきた懐疑的姿勢が必須で、自分を見つめ正していくわけである。


本書を読んでいる中で、まず思い浮かんだのは大学時代に読んだクリティカルシンキングという緑が綺麗な表紙の本だった。それはおかしやすい論理的な誤りのパターンが列挙されていて、まとまった文を読んだ上でその誤りを指摘するような実戦?ドリル形式の本だった。本書より限定的なあくまで”論理的な”思考のよくある誤りパターンの話だったが、懐疑的、批判的に自己がいかに間違うか問いかけられたいい本だった。間違いやすい場所やポイントを、ここまで丁寧に教えてもらえるとは思わなかった。


本書では具体例としてのバイアス、誤り、失敗しやすい心の作用、そういったものはかなりの数、それも広範な視点であげられているものの、雑多雑然とかかれており、参考になるチェックリストとしては活用できそうになかったし、当然練習問題はついてない。本書の言いたい事を身につけるためには、動かした事も動くとも思っていない筋肉を、動かせるように、意識しましょうぐらいなわりとアバウトな感じがあるのが残念だった。


話は変わるが、車仕事やスマホゲームの機会が増えて、常々感じていた疑問が、この本を通じて理解できた。言わば下手な奴は下手。駄目な奴はずっと変わらない。という話なのだが。ある程度マスターすると、もう気を使わなくなり、満足してしまう=学習の高原説?と本書で説明されていた点がそうだ。何十年やろうが、頻度や時間も多かろうが、これでいいやと思った段階で試行錯誤や改善(変化)は止まり、後は無意識な直感でだらだらと経験を糧に繰り返すのみ。大失敗はないだろうが、似た失敗は繰り返すし、場当たり(状況でさまよう)いいかげんなことばかり。


前や上を向こうとしない心のあり方、あるいは満足してあがりを迎えた人達。その人の心のありかたの問題で、つまり、考える事を辞めてしまった人達だ。ただしそれは落伍者ではない。経験にのっとりそこそこやれるだろうし、分野や経験値や状況によっては、個人差もあるしそもそも別に考えなくても問題はないことは多いのだから、世の中にどこにどう潜んでいるか分からない。ただ、脳が蓄積した経験や直感で動くというのは、見えない意思にあやつられているような気持ち悪さがあるし、そういう人は尚更気持ち悪くもある。操り人形はいいすぎだろうけれど……。極端に言えば、イヤだからイヤ(拒絶や罵倒、嘲り)ができる人ってわけなんだから。交わらない平行線ってことなんだから。ふと、実篤の真理先生の一節をもういちど読み返したくなった。