とにかく考えた、事・方法論を書くことにした。

最近は雑記ばかり。サーフィンと読んだ本に関して考えた事などを書いていきます。

北村薫 時と人の3部作を読んで

北村薫が書いた「時と人」をテーマにした3作品を読んだ。『ターン』『スキップ』『リセット』結論から言えば、「時間の流れが感じさせる無常さと人」が正しいテーマで、SF的なものを求めて読む作品ではなかった。

ターン (新潮文庫)

ターン (新潮文庫)

スキップ (新潮文庫)

スキップ (新潮文庫)

リセット (新潮文庫)

リセット (新潮文庫)




■『ターン』時間の流れから断絶して独りぼっちになった無常

交通事故をさかいにループ世界に紛れ込む。しかし、そのループ世界では生き物がおらず(虫含め)1人きりでの生活が始まる。結局はじめの日に戻る徒労感にあきらめかけていたが、ふとした拍子に、通常世界と電話がつながり唯一相談できるパートナーを手に入れる。しかし、ループ世界にも別の事故で巻き込まれた人間があらわれて・・・という話。



ループ世界を単純に事故の間に見る夢とせずに、「くるりん」という表現で現そうとしたり、時間の流れから飛び出したので、動く物体(生き物)はこちらの世界には存在しないなどのループ世界の設定やその説明はなかなか面白かった。物語後半のループ世界を利用した鬼気迫る展開もなかなかよかった。多分SF的な時間モノに入れていいのは3部作中これだけだと思う。ただ、第1章はあまり聞いたこともない美術に関する薀蓄がだらだらと続くので、そこは流し読みをしてしまった。世界観や登場人物の紹介の意図なのだろうが、導入がよくない。




■『スキップ』いきなり数十年後に飛ばされて、自分と世界のつながりを見失う無常

ふとした拍子に、25年後?に意識だけ飛ぶ。其処には、老いて肉が付いた私と、ただのオジさんにしか見えない夫。そして飛ぶ前と同い年の娘までいた。どうにも戻れそうにないので、そのままなんとか失った時間を気にしないで順応しようとするのだが・・・という話。



結論から言えば、昔に戻れませんというか戻ろうと必死になりません。笑 では自分と世界のつながりを見失って悲観にくれる話だったかというとそうでもなく、教師の職を苦労しながらも勤め上げていく成長譚になってます。つまり、ただの教師物語です。新学期始まる前の準備だとか、不良になった男の子とか、実力テストの作り方に、文化祭の運営とか・・・教師になりたい人にむしろオススメかもしれないぐらいだ。
意識が飛ぶまでの展開も遅く、飛んでからは教師物語なのでSF的な時間モノではない。唯一面白かった点を上げるなら、オジサン(一応夫)がいて、積み上げてきた記憶がない今彼を魅力的とは思えない・・・しかし、娘がいるということはこの人と性的なことをしたんだ・・・という言葉にできない悲しみを主人公が感じたシーンだろう。





■『リセット』私には父がいて、その父にはまた父がいて・・・という歴史の雄大

私と父の今。父の日記から見る過去。別の視点からの日記の過去と同じ時間。その他。などのいくつかの時間軸で構成されている。いろいろな時間軸を重ねながらも、昔から今へ流れがあり、それが続いているということを感じさせる歴史スペクタクルである。一人の一生を追ったドキュメンタリーを見ていて感じる雄大さのような感じ。



時間移動がそもそもない。前世の記憶が戻るというギミックがあるのだが、それがメインではなく、本当に戦争時の時代やそのあたりの時代を眺めるのがメインである。戦争や歴史が好きな人は読んだほうがいいと思う。戦争時に子供がどんな遊びをしていたとか。カラーテレビが家庭に広まるときの子供の反応とか、興味ない自分には・・・つまらなかった。





あんまりどれも時間モノとしては面白くなく、オススメしない。ただ、北村薫の教養深い文章との相性が悪い補正アリ