とにかく考えた、事・方法論を書くことにした。

最近は雑記ばかり。サーフィンと読んだ本に関して考えた事などを書いていきます。

サマー/タイム/トラベラー  〜置いてきぼり〜

自分の好きなジャンルには精通していたい。好きなジャンルだから、良作の数々や駄作の数々にも触れたい。自分は”時間モノ”と”ミステリー”が好きなので、少なくとも人生残り40年はあることだし、時間モノ作品を網羅したいと思っている。(ゲーム、映画、小説、アニメと問わず)
早速wikiで検索したところ第一作候補を発見。『サマー/タイム/トラベラー1・2』 新城カズマ ハヤカワ文庫 である。理由は、身近な少女に起きたタイムトラベル現象を追究するため、”古今東西のタイムトラベル現象を扱った作品を資料にして”現象を解明しようとする展開があるからだ。解明の中で、他の時間モノ作品の解説や紹介があり、次に読む作品選びにになると期待していた。



今回が計画始動の初回書き込みなので、決起宣言みたいなものをしてみた。以下から、本作の感想に移る。



サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)





■SF好き同士の語り合いとしての側面を持った作品

ネタで笑いをとる描写

例えば、「毎日違う髪形なのは、宇宙人対策か??」という台詞を本編に紛れ込ませるようなこと。(涼宮ハルヒの憂鬱が元ネタ)作者である私もあなたが読んだ作品を見てますよという合図を送り、作者と読者の間に秘密や共通点を持たせることで、ストーリーではないところで楽しさや笑いを感じさせられた。


本作だと、3段階で行われている。
1、既存のSF作品の、タイトルや著者名を登場させる。
2、既存のSF作品で使われた、台詞や登場人物名や作品のテーマを登場させる。
3、既存のSF作品で使われた、科学技術や哲学、宇宙論など関するSF理論を議論させる。
夏への扉オーロラの彼方へ等の有名作品の名前だけは知っていたが、そのほかのネタの数々には全くついていけなかった。


ネタを盛り込むというのは同じジャンルのマニアに向けてのメッセージであり、それは同じ趣味を持った友人同士の会話のようなものだ。作品制作の主軸におくのもあリかもしれない。別のジャンル・・・例えば、最高のギャルゲーを作ろう!!という話にして、古今東西のギャルゲーのネタをコレでもかと盛り込んでみるなんてのを考えただけでもそこそこ面白い。



■置いてきぼり 〜本作の核心テーマ〜

今作のタイムトラベルが問いかけるテーマは、『置いてきぼり』であり、タイムトラベルで旅立たれた側・・・置いてきぼりの側から眺めた別れの辛さと悲しさについてである。(タイムトラベルに関する新擬似科学理論ではないし、過去は変えられるかというパラドックスに関する作者の新解釈でもない。)タイムトラベルとは新世界への旅立ちであり、それは現在の人たちと別れる(離れる)ことである。二度と戻ってこれないわけではないが、新世界(あるいは新しく手に入れた力の可能性)と現在が秤にかけられながら現在が負け、置いていかれるのだ。とそういう感傷面をクローズアップしている。



舞台設定やキャラ設定や細々としたエピソードのすべてに、その置いてきぼり概念が組み込まれている。
・地方都市が舞台であり、東京や都心というものからおいてかれている
・主人公はタイムトラベルする彼女が好き、しかし彼女からおいてかれる  などなど
脳内のニューロンと使われなくなった川とS=Z症候群だとか、時にSFチックに時に町の地理だったりといろいろな分野にあてはめながら、置いてきぼり概念を説明する。おいてきぼり=離れる=空間や時間による断絶であり、この世のいたるところで時間や人が動き回っているのだから、常に置いてきぼりは発生しているので、まぁ、置いてきぼりについて語る領域はさまざまあったのだろう。




どこにでも行ける能力(タイムトラベル)だとか、なんだってできる能力だとかを手に入れた少年少女がいるとする。それが、自分の友人だったとき、彼や彼女は別れの挨拶一つで、新しい世界へ旅立っていくのだろうか。いい大人の僕は、嫉妬だとか、ショックとかを感じながらも顔に出さないように見送るのだろう・・・。そんな風に置き換えて少し考えてみた。

自分は臆病だから、旅立つ前にこっちが旅立って、別れをうやむやにして、きっと別れなんてないことにすると思うな。