とにかく考えた、事・方法論を書くことにした。

最近は雑記ばかり。サーフィンと読んだ本に関して考えた事などを書いていきます。

物理トリックでは、面白さの限界がないだろうか

やりすぎれば、ありえない。
控えれば、つまらない
それが物理トリックです。

引用元:『瑠璃城』殺人事件 講談社文庫版の解説を担当された辻村深月氏の一文。


◆はじめに

先日、真かまいたちの夜に触れる機会があり、とある物理トリックを見た時に、コレジャナイ感がありまして……ありていに言えば、つまらなかった。初代かまいたちや、ファンによって作られたかまいたちの夜煉獄でも、物理トリックが使われていたのですが、その時は違和感なかったように思います……。というわけで、物理トリックの成立要件や、面白さとの関連性など、少し考えてみようと思います。まぁ、真髄は、辻村さんの言葉で要約されていて、もうこれ以上のことは蛇足でしょうが。



◆物理トリックとは

物理法則、自然現象、機械・装置などの仕組みを用いて、構成されるトリック。犯行可能な人物がいない、密室、凶器の不在といった不可能犯罪を演出する。


◆分類 方向性

○密室構築

壮大な仕組みを用いた密室トリックは、こんなことできねーよwwと失笑がもれ駄作認定されますね。まさにやりすぎれば、ありえない。ただ、控えめでも面白いのはありますけどね。



○アリバイトリック

・殺人装置
 ある時間に作動するようセット、あるいは遠隔操作で、電話一本が起点に〜など。殺害時刻そのものをずらす。


・音や悲鳴等の音響発生装置 
 死亡時刻がはっきりしない状況で、窓ガラスを装置で割った音や、録音された悲鳴などで犯行発覚時刻に、犯人がそこにいたようにみせる。


・自然現象や生物の習性、鏡、錯覚など
その時刻、その場所に死体があるはずなのに、それを見えないように隠す。別の場所と誤認させる。死体発見時刻がずれて、犯行可能時刻がズレ、さらに死体運搬?とミスリードさせる。


・人影、不審者、人に見える装置を仕込む
死体を使ったり、人影に見えるようにものを動かしたりして、他の人間とともに目撃。クローズとサークルで、外部からの敵へとミスリード


・存在証明装置
どこそこ行きのキップや目撃情報など、写真をデジタル加工したり嘘の記録をつくる。


○凶器系
・凶器の消失
一見凶器と思えないものや日用品を驚く方法で凶器に使う。靴下に小銭や石をつめて振り回し、遠心力で撲殺など。ベタすぎるとがった氷を使ったも。


◆思い返してみて

色々分類しながら、トリックを思い返すと、分類ごとに、ちゃんと成立させるのに必要な条件が異なる気がします。


1、広く知れ渡っているせいで、陳腐に見られる
トリック全般にもいえますが、ミステリは驚きの世界なわけで、斬新さが必須。糸やテグスを使った密室は、どんなに奇抜な使い方をしても、あぁそういう系統のトリックねとなるでしょう。


2、合理性の欠如とご都合主義。
時限殺人装置と密室構築において、顕著に関わる気がします。装置や構築の難易度が増せば増すほど、高いコストを払ってまでそれを行う必然性・合理性が求められからです。


密室の場合、合理的に考えれば、密室にするよりも誰でも犯行を行えた方が……極端な話、真夜中の通り魔の方が容疑者から探さなければいけない分、よっぽど捕まりにくい。なので、自殺に見せかけるか。死体発見時刻を遅れさせる程度のメリットしか密室にはない。そのメリットのために壮大な仕掛けを施した密室をされると、そんなことする前に、他にやりようがあるだろうと思ってしまうわけです。


また、殺人装置の場合、確実に殺せる。失敗しても確実に足がつかないなら、試す価値はあるかもしれませんが、複雑な装置にすればするほど、その両方の可能性が下がるのは目に見えているので、これも壮大になればなるほど、おいおいwと思ってしまうわけです。さらに、殺人装置の場合、被害者が気づかなかった?よけれなかった?なんでピンポイントの位置に被害者が来た?とご都合主義臭さを排除する描写も必須かと。


逆に言えば、音がなるように仕込む程度なら手間もかからないでしょうし、雑な作りでもまぁ目的を果たせる。また、存在証明装置のために、何分の乗り換えとか必死に走りまわるのは、既にやらかした事件を誤魔化そうと必死になったがゆえと思えば、わからなくもないわけです。


3、映像美
小説の物理トリック最大の泣き所かもしれません。当然、映像(漫画含め)のほうが、物理トリックを理解しやすく、受け入れやすいでしょう。十分理解して→なるほどとなるわけですから。

裏を返せば、小説内の図で説明されてるけど、よく意味が分からん。こういう簡易的な図なら成り立つかもしれないけど……。と文章だけだと消化不良に陥りがちな気がします。



◆おわりに

物理トリックの性質的な分類から、物理トリック使用における留意点がもうすこしでてくるので、思考の余地は残っていますが、この辺でやめときます。


複雑 ⇔ 単純
知識としては理解している範疇 ⇔ とんでも現象・物理法則を利用
現実的再現性の高い ⇔ 低い


個人的に、ざっと思いつくのだと
・木の小屋の密室。木が水をすって伸びたり、乾燥して縮む。その微妙な隙間を利用
・ベニヤみたいな薄い木で囲まれた密室。木に力を加えてたゆませる。
・中との気圧差のせいで、ドアがあかなかった、逆に自然に閉まったとか。
・L字型のドライアイスをロックタイプの鍵にかけておき、解けていくと重心により回る。
この辺はおっと思いました。


そこまで難しいことではなく、思考の転換でできる。そして、誰でも知っていることを活用する。トリックについて考えていくと、自分の好き嫌いがはっきり見えてくる気がします。日常の謎やら合理性やらでも何度も書いてきますが、正面から堂々と隠さず、それでいて垣根はなく、かつ、アクロバティックな盲点をついて、予想外の結論を導く。自分には物理トリックは向いてなさそうです。