とにかく考えた、事・方法論を書くことにした。

最近は雑記ばかり。サーフィンと読んだ本に関して考えた事などを書いていきます。

『ドラマ』都市伝説の女を鑑賞・感想 〜怪異ミステリを求めて〜

怪異ミステリが凄く面白い素材に思える。ミステリのなにか可能性が埋まっているような、そんな感覚に囚われ、それらしい作品に手を伸ばしつつある今日この頃。さて、ドラマ都市伝説の女の怪異ミステリを求める視点から感想を書く。

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※私の中で怪異ミステリとは、今のところオカルト的なものが事件(ミステリ)に絡んでくる程度の拾い認識でとらえています。




都市伝説の女における怪異要素

予め断っておくがこのドラマはミステリではない。警視庁に勤める美人でミニスカ私服!?の都市伝説オタクの女性刑事が、遭遇する事件に都市伝説要素を”勝手に見出して”、”勝手に都市伝説を証明しようと”捜査をすすめるなかで、都市伝説は大体否定され、明らかになった新事実で犯人特定という、刑事ドラマに美人で変わり者刑事を取り入れた作品。ミステリではないが、殺人事件がおきそこで都市伝説が登場するので、そのあたりで怪異がどう生かされ、どう捜査や解決に関わってるかを考えてみたい。



・主人公が都市伝説オタク
物語に怪異(都市伝説)の要素を取り込むために、その案内人として怪異に造詣が深い人物が登場する必要がある。今作においては、それが主人公であった。ただ思うに、根本的な物語論の話になってしまうが、こういう人物を主人公にしてはそもそもいけない。なぜなら、
1、読者が変わり者キャラの主人公の行動に共感できないという致命的な欠陥がある。
2、造詣が深く洞察・推理力に長けていると、一人で話が完結してしまうので、極端に言えば、一目ですべて見通して事件解決できてしまうので、物語の動かし方が難しくなる。例をだせば、ワトソンがホームズに色々利いたり、的外れなことを指摘するから、ホームズの思考が会話を通じて目に見えるようになり、そして事件が紐解かれていくのである。



さて、この怪異への案内人は、その本来の都市伝説の繋がりや関係性を指摘する役割に加えて、積極的にその存在を証明しようとする動機を持っていた。この動機付けも、主人公にさせる役割ではなかったと思う。事件を解決することがゴールであるのに、主人公がそこから外れ方向に向かっていく・・・。もし、主人公でなく他の人物としてこういう動機を持つキャラがいた場合は、いかようにも物語の作り方次第でどうとでもなるとおもう。



・各事件における怪異の関わり方(下記詳細)


◆怪異と事件の関係性。各話列挙

第1話 平将門と転落死
転落死の死亡理由を、将門の呪いと関連付ける。捜査の過程で被害者は呪いを理解していたとして、都市伝説否定。物的証拠により真相究明。



第2話 資産家死亡と呪いのダイヤモンド
死亡理由を、持ち主に不幸が及ぶダイヤモンドの災いと関連付ける。捜査の過程で、ダイヤがニセモノであること、被害者の行動を再現し、真相究明。



第3話 ドッペるゲンガーの呪い
死亡理由を、ドッペルゲンガーを見た人は死ぬという噂と関連付ける。同じ顔の人物が二人移った写真からそう考えたが、捜査の結果、瓜二つの人物を発見し、そこから真相究明。



第4話 高尾山の首吊りしたいと天狗
首吊り死体を、天狗の仕業または目撃者がショックで記憶を喪失している事から、天狗が関与したと関連付ける。捜査の結果、真犯人発見。天狗の笑い声や、羽を見つけ、もしかしたらいたのかも?でエンド。



第5話 国会議事堂にある呪われているという部屋で殺人
死亡理由を、呪われた部屋んせいで心神喪失状態にあったためと関連付ける。捜査の過程で、真犯人発見。国会議事堂と首相官邸を結ぶ秘密の地下通路があるという都市伝説は、その犯人が使用したということで一応証明される。



第6話 東京タワーのライトダウンを一緒にみれたカップルは永遠の愛を。
という都市伝説を信じている登場人物の行動が、事件の鍵や引き金になっていた。都市伝説の審議は定かではないが、捜査の結果、犯人特定。



第7話 座敷わらし登場
座敷わらしが登場。数名が目撃。座敷わらしの指し示すアドバイスの手助けをかりつつ捜査の結果、真相究明。



第8話 満月の夜の殺人事件 狼男?
満月の夜に超人的身体能力の持ち主によって、3名の連続殺人がおきる。狼男と関連づける。主人公らが襲われたときに、逆に犯人逮捕。暗示により操られていたと発覚。狼男ではなかった。



第9話 徳川埋蔵金
徳川埋蔵金伝説を信じ、さらにそれを手に入れたんじゃないかと思い込んだ都市伝説信者らによる殺人。徳川埋蔵金のありかは・・・?






◆怪異と事件の関係性。分析

・死亡理由またはその犯人を怪異であるとするパターン。
このケースだと、真犯人は人間でしたというなんちゃってパターンと、一見わからなかったが殺人装置や特別な殺人理由があったパターンと、そして、本当に超常的な呪いの仕業であったというパターンがある。今作ではなんちゃってケースばかり。不可能・不可解状況で事件がおこり人間業とは思えない→怪異犯人説ならわかるのだが、普通の事件でいきなりこじつけの都市伝説犯人提唱のため、最初から呪いが犯人なわけはないと白けてしまう。


なお、二番目のケースは、この部屋でピアノを弾くと中の空気が抜けていき窒息死するとか、何百年前の毒のせいで死んで、ある意味これも呪いだとか。つまり、一見、超常的力による死に見えるが、推理や捜査の結果、人間業だとわかってしまうということや、超常的な何かによって、殺害が頻発してしまうようにみえたものの、真相は人間業や人間的な動機によるものと判明する場合である。そして最後の、本当に単なる呪いですでは、ミステリとしては成立しない。(第1話、第2話、第3話、第4話、第8話)




・誤解・勘違い含め殺害動機に関与するパターン。
都市伝説に心酔してるがゆえに、ある状況を見たとき、だれかにのろいをかけているとか、浮気をしているなどと勘違いする場合が考えられる。そういった動機を誘発してしまう都市伝説の関連付けがなされる場合。今作でも、犯人または被害者の勘違いや思い込みの行動であったことを示して事件解決している。

一見不可解や他愛ない行動が、実は犯人や被害者には特別な意味があったというのはよくあるミステリの手法にも合致する。(第3話、第5話、第6話、第9話)




・事件のごく一部への関与
事件の犯人や犯人のとった行動はある程度人為的であるとも思われるが、その事件と関連し前後におきた被害等に怪異が関わっていると思われる場合。例をあげれば、記憶喪失になった。さまよった。偽役に行き先を教えられ助かったなど。

事件の本筋と関わらない以上、ミステリで言えば考えなくていい問題になるし、そういう決着をつけなくていい位置だから、いたかもしれないしいなかったかもしれないと濁した演出をとってつけることも可能である。(第3話、第4話、第5話)





・解決への手助け
超常的な力を借りる探偵役。ミステリではないが、幽霊や死体の声を聞く。死者の記憶に飛び込むといったオカルティックなものから、犬並みに鼻が利くのでソレを利用した捜査ができるとか。大金持ちが事件解決のため印盛大に金をかけた罠をしかけるとかもある。

ミステリの視点でみた場合、能力そのものが証明材料になっていなければ、問題はないと思う。例えば、お前が犯人だ。俺の力でわかったは成立しないが、俺の力でお前が犯人だと分かったから、徹底的に調べ上げてこの証拠を見つけたなら成立する。(第7話)






◆怪異と事件の関係性。まとめ

怪異とミステリの関係性を要約


1、事件内の怪異(謎に内包される怪異)
・犯人
 怪異や呪いそのものを犯人にすることは難しい。しかし、怪異が能力等を行使したとしても、その証明が可能な場合に限り、物理法則を無視した超常的な存在が犯人の場合もありうる。能力に明確な制限とルールの運用が求められるが、それができれば、その世界の”ルール”で、怪異が存在するという前提のもと、推理可能である。例えば、超能力者が犯人であったとしても、その能力の内容や使用回数等、事件の証明に必要な情報を提示すれば犯人の行動やその意味を推察できる。、


・動機
被害者や犯人にとっては特別に見える理由。被害者や犯人の誤解や思い込みを動機にする。都市伝説や呪いや暗示なんでもいいが、これば選択と描写の問題になりそうである。その呪い等を本当にしんずるにたるような信憑性があるのか、読者に信じ込ませ納得させるだけの書き方ができるのか。



・トリックや行われたこと
不可能・不可解に見えたことが、実は人間業でしたという場合。行われたこと事態を怪異にするならば、上述の犯人の面のルールを遵守したうえで、フーダニットの話となる。人間には不可能だと思わせて、怪異の存在をいかに信じ込ませられるかは描写の腕だろう。



2、事件の解決に関わる怪異
ヒントをくれたり、手助けしてくれる怪異。ミステリを遵守してのアドバイス役でもいいし、サスペンス調でばっさばっさと事件を解決に導く格好いい主人公を描いてもいい。



3、その他。事件とは直接関わらない怪異
小話として冒頭に呪いにまつわる話をいれたり。事件の渦中で起こった電気が点滅するとか、本当に怪異は存在するかもと思わせる事件には関係しない部分での演出全般。
挿入話、小話、事件には関係しない一部の小事件、登場人物に怪異好きがいる。怪異を引き寄せる体質の人物がいる等など。怪異を感知できる能力があるとか。



おわりに

ミステリの魅力とは、不可能性と不可解性を提示した上で、それを鮮やかに解決する事にあると思う。その際、どんなに不可解・不可能であってもどうせ人間がやったことだからと思わせてしまうと、不可能性や不可解性がもつ得体のしれないものへの恐怖という美味な部分をみすみす捨ててしまうことになる。怪異ミステリとは、その謎がもつ神秘性や恐怖を生かそうという試みであるように思う。ただし、上述のように、演出として小話や事件の前おきにに呪いが存在するかのような話をしておきながら、事実は人間業と結論付けるか。あるいは、怪異の能力を厳密に定義して、彼らも容疑者の枠に落としこみ犯人特定の舞台に引き込むかだろう。しかし、肝試し前に怖い話をするかのような、事件に関連させた恐怖話が本当に恐怖を感じさせるのだろうか。また、正体がばれて追求もできる存在となった怪異に、恐怖や畏怖は残るのだろうか。残らないだろう。


先が気になる謎というミステリの力に加えて、謎に潜む恐怖。怖くてすすみたくないが、怖いゆえに知りたくもある心理の力を取り込むには、怪異ミステリという枠ではなく、クローズサークルやデスゲームなど、そういう角度で考えて恐怖を取り入れようとしたほうがスムーズに行くのかもしれない。