とにかく考えた、事・方法論を書くことにした。

最近は雑記ばかり。サーフィンと読んだ本に関して考えた事などを書いていきます。

虚実入り混じった物語の効果。

リメインダラー、帰ってきたヒトラーと虚実入り混じった物語にふれて、少し考えさせられた事について考えてみる。




◆虚実入り混じった作品の魅力や狙い

虚実が入り混じるとは、真実が特定されないこと、二つの反する事実が同時に成立するような不安定な状態に晒される事。正しさがなくなり、混沌とすること。裏の裏の裏のように入れ子、あるいは合わせ鏡のように無限に続いていくように思えることである。



虚実入り混じった作品というのは、上述のような特徴を持ち、端的に言えば、読み手をもやもやとさせ苛だたせる。わからない、隠されていて、先が見えないのだ。とりわけ、研究者肌や好奇心、探究心の強い人ほど掠め取られ、その構造に期待するのだ。安定と決着を求めて。



正確に言えば、すべての作品は同様の性質を持つ。先の展開が読めない。予想できない。予想外の出来事・・・。しかし、虚実入り混じった作品のもたらす効果は、それらとは一味も二味も異なる。決着がついたように見えても、これまで散々とウソにさらされてきた読み手にとっては、またもしかしたら・・・?と疑惑をそこに抱かされ、永遠の迷路に閉じ込められるのだ。


ばかばかしいとおもう人は、その永遠2次元迷路を、最初から見向きもしない。あるいは、中に取り込まれても、ひょいと飛び上がって現実世界に戻り、つまらないと悪態をつく。しかし、永遠の迷路。永遠が持つ不可思議性、幻想性、探究心。不安定と安定。もしかしたら答えが眠っているかもしれない、自分だけには解けるかもしれない。そういう人はその迷路をさまよい、さまよう事に喜び、さまよっている人同士で語り合う。ばかばかしい作品をひとをくった作品ともいうが、まさに、作品が”人を食って”取り込む。ばかばかしいとは紙一重のものなのかもしれない。





◆虚実入り混じりの方法

1、セミドキュメンタリーや、ノンフィクション風フィクション
例)帰ってきたヒトラー、放送禁止、ブレアウィッチプロジェクト。盗撮風AVとか。
物語、作品に確固として存在する作り物と現実の境界線。それを曖昧にする事で、リアルなことのように見せる。出演者自身にカメラを持たせて撮影している演出。手ブレしたり、画質を落とす、通常の目線と同じ絵面。カメラがあることを出演者が意識している。等





2、劇中劇、作品内作品、体験治療
作品内の真実と虚実を曖昧にする事で、作品内の真実や結末を留保・ブレさせる。殺人事件があったようにみえていたとしても、壮大な舞台の1つだった。実際は死んでいない。登場人物らが映画作りなどを行い、現実の1シーンなのかその映画内のワンシーンの映像なのかわからなくさせる。あるいは、病気の患者の治療という名目で、彼ら彼女らの突飛な振る舞いに、その場はあわせているが、彼ら彼女が居ないときとは全く別の言動をする。視聴者はそれで混乱する。





3、視点誤認、叙述トリック、白昼夢(妄想が見えてしまう)
2の方法とやり口は同一。ただ、2は嘘を成立させるための舞台状況作りにおいて、周りに協力させる合理的理由のある点が特徴。一方3は、ご都合主義というか、作り側の身勝手な挿入がどこまでも許される点が特徴。急に数年前の映像や状況に場面転換し、過去と今を誤認させたり、全然別の私を同じ主人公だと思って読ませたり。イカレタ主人公は、妄想空想を現実のようにみえてしまうとしたり。2と比べて3の方が自由度が高く使いやすい。しかし、嘘虚の使われ方の合理性やルール(法則性)がないと、最後に読者の納得を得がたい。ミステリであるなら、尚更、ルールを明確に遵守し、ルールが推察できるような材料も提示しなければならない。





4、手加減、ウソ、本音を言わない。
極個人的な方法。ありとあらゆる物語で一番簡単に用いられる結末の留保・ブレ。手加減していたから、本気をだすといい勝負になる。好きではないとウソをついたのが、偶然立ち聞きされてしまう。本当のことをいわない誤解や勘違いで、事態はねじれていったり。嘘虚ではあるが、これらはすぐにばれる、あるいは読者にはばらされていて、物語のクライマックス(頂上)へと、ジグザグに上る程度のものだろう。






◆おわりに

難解なものを高尚なものだと思う。考えさせられるものを高尚だと思う。考察することが楽しい。人間にとってそういう感情は確かにあるが、それらは楽しみ方の1つであって、万人に受け入れられるものではないとは思う。むしろ少数派だろう。でも、そういう楽しみもあるにはあるわけで、そういう視点・要素を意識した作品作りもアリかもしれない。



ちなみに、リメインダラーはドグラマグラの丸被りでした。構造やオチや、展開のすべて。あれで衝撃を受けた人は、その感動をドグラマグラ(過去に同じテーマを扱った作品)の方に、あげてほしいですね。帰ってきたヒトラーは、予告CMよりチープ、B級映画テイストがやばかった。それだけで投げ出したくなるくらい・・・。まぁ慣れてきたら、違った面白さを発見でき最後まで見れました。